【3ステップで残業削減】働き方改革で残業は減らない?管理方法の見直しで生産性向上
目次
2018年に働き方改革関連法案が設立してからしばらくたち、「働き方改革」というワードは一般的なものとなりました。
国の重要施策である働き方改革は、すべての企業が真剣に向き合うべき施策です。
「働き方改革に取り組んでいますか?」という質問に対し、「No」と答える企業は少ないのではないでしょうか。
それでは、「働き方改革で残業(時間外労働)を削減し、生産性を高めることができましたか?」という質問はどうでしょうか。実のところ、「Yes」とすぐに回答できる企業は少ないのではないでしょうか。
本記事では、「働き方改革に取り組んでみたが、残業(時間外労働)の削減が出来ていない」「生産性が向上していない」という企業に対して、以下2点を案内します。
【本記事の内容】
- 残業(時間外労働)が削減できない理由
- 残業(時間外労働)削減方法(3ステップ)
管理方法を少し見直すだけで、意外とすんなり課題を解決できることもあるかと思います。
ぜひ、一度、管理方法を見直ししてみてはいかがでしょうか。
働き方改革|残業の上限規制とは?
まずは、働き方改革における「残業(時間外労働)の上限規制」について、改めて確認していきましょう。
働き方改革 残業上限規制の目的
働き方改革とは、少子高齢化により人口が減少する日本において、「働き手」を確保するための施策です。
これまで出産や介護など個々の事情により、フルタイムで働くことが難しかったような人々も、「働く」という選択肢が取ることができるように、就業環境整備することを目的としています。
つまり、“就業機会を拡大して働き手を増やそう“という施策なのです。
就業機会の拡大にあたり、「長時間労働」は解決が必須とされる問題です。
長時間労働は、健康を損ねるというデメリットがある他、ライフワークバランスを阻みます。
女性のキャリア形成の障害となったり、男性が家庭参加を困難にしたり。
長時間労働は、「働き手を増やす」という目的に対する大きなハードルとなっているのです。
政府はこうした長時間労働に関する問題を解消すべく、2019年4月に労働基準法を改正し、罰則規定ありの「残業(時間外労働)の上限」を規定しました。
要するに、“働き方改革を通じて、長時間労働に関する取り決めがこれまでよりも厳しくなった”ということです。
働き方改革以前の残業管理
労働基準法改正前にも、残業(時間外労働)の規制は原則月間45時間・年間360時間と定められていました。
しかし、上限を超過した場合にも行政指導のみで、罰則などは制定されていませんでした。
また、特別条項付きの36協定を締結することで、上限無く残業(時間外労働)が認められていたのです。
つまり、残業(時間外労働)に関して一応制約はあったものの強制力が弱く、実質、青天井に残業(時間外労働)をさせることができてしまっていたということです。
これに対して労働基準法改正では、違反した場合の罰則を設け、残業(時間外労働)上限規制に対する強制力を高めました。
さらに、特別な事情があり残業(時間外労働)上限を超過する月があった場合においても制限を設けています。
時間外労働の上限規制の3つのポイント(労働基準法改正)
労働基準法改正後に企業が順守しなくてはならない、残業(時間外労働)管理のポイントをまとめました。企業は以下の3点に従う義務があり、違反した場合、事業主は30万円の罰金、または6か月以下の懲役に課せられる可能性があります。
【残業の上限規制3つのポイント】1.時間外労働の上限は月間45時間・年間360時間
時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月間45時間・年間360時間となります。特別な事情がなければ、これを超えることはできません。
2.特別な事情があって労使が合意する場合
原則は、時間外労働は月間45時間・年間360時間以内に収める必要がありますが、特別な事情があり、労使がこれに合意する場合、以下の規定の範囲内での勤務が認められます。
- 時間外労働:年間720時間以内
- 時間外労働+休日労働:月間100時間未満、2~6か月の月間平均80時間以内
3.時間外労働上限を超過できる回数は年6回まで
時間外労働の月間上限45時間を超えることができるのは、年間6回までです。
残業の上限規制はいつから適用されるのか?
残業(時間外労働)上限規制の施行は、2019年4月1日~となります。
ただし、中小企業は1年間の猶予があり、2020年4月1日~施行されます。(建設業など一部の業種については5年の猶予があります。解説を後述していますのでご参照ください)
中小企業の定義
自社が中小企業に当てはまるのかどうかは、以下の表から判断することができます。
- 資本金の額または出資の総額
- 常時使用する労働者の数
のいずれか以下の定義に当てはまれば、中小企業に該当すると分類され、残業(時間外労働)上限規制の施行は2020年4月1日~となります。
※出典元:厚労省 働き方改革特設サイト|時間外労働の上限規制
2024年4月~適用となる業種 (建設業・自動車運転業 他)
建設業、自動車運転業、医師などについては、残業(時間外労働)上限規制の施行が2024年4月~となります。
また、2024年4月以降に関しても、一部、適用が除外される事項や上限時間が異なる業種があります。(下記の表をご参照ください)
※出典元:厚労省 働き方改革特設サイト|時間外労働の上限規制
働き方改革で残業が削減できない理由
前述のように企業は“働き方改革によって強制的に残業(時間外労働)のキャップをはめられた状態“になったわけですが、残業(時間外労働)の削減を実感できていない企業も多いのではないでしょうか。
それもそのはず。ただ残業(時間外労働)の上限規制をするだけでは、削減はできません。
課題に対して改善に向けた施策を講じていく必要があります。
まずは現状の管理方法について見直しをし、生産性を高める仕組みづくりをしていきましょう。
1.「残業削減」ではなく「給与計算」が目的に
残業時間(時間外労働)の集計データを分析に活用していますか?
給与計算をすることを目的とし、機械的に集計するだけの作業を「残業管理」と呼んでいる企業は少なくありません。
状況改善をしたいと考えているならば、現状の課題分析は不可欠です。
現在、集計した残業(時間外労働)データを給与計算のみにしか活用していないのであれば、目的意識を改める必要があります。
2.一方通行の「残業(時間外労働)記録」状態に
一方的に従業員が出勤簿に残業(時間外労働)を記載する・・という単なる“残業記録”になっていませんか?管理者が部下の月間残業(時間外労働)時間を把握していないというケースは往々にしてあります。
また、「現場に任せているから・・」と人事が従業員の残業(時間外労働)状況を把握できていないケースも多いです。
残業(時間外労働)実態を把握することは、マネジメントをする上で最重要事項です。
そして、実態を把握するには双方向でのコミュニケーションが必要です。
一方的に従業員が出退勤時間を記録するという形ではなく、管理者と部下の間でコミュニケーションが取れるような仕組みを取り入れましょう。(または人事と従業員)
残業を削減する具体的な方法|事例紹介
それでは、残業(時間外労働)を軽減する具体的な方法について、ご紹介していきます。
簡単に取り組める方法もありますので、是非、どれか1つでも試してみてください。
ちょっとした見直しが大きな成果を生むということもあると思います。
ステップ1:残業(時間外労働)を申請・承認式に
前項の『働き方改革で残業(時間外労働)が削減できない理由』で残業実態の把握の重要性と、コミュニケーションを取れる仕組みづくりの必要性を提唱しましたが、まずは、“残業(時間外労働)の実態を把握する”というステップから始めましょう。
残業(時間外)を申請方式にしていない場合、申請・承認のステップを取り入れてみてください。このひと手間をかけるだけで、残業(時間外労働)の実態を把握するのに役立つだけではなく、抑制効果も期待できます。
「残業時間」、および「残業理由」を申請させることで、管理者は部下が「なぜ残業をしているのか」、「どのくらい残業をしているのか」把握することができます。
つまり、残業発生の要因の特定と最適な解決策の実施ができるようになるのです。
【プラスα】タスクごとの工数を管理することでより具体的に勤務実態を把握
何のタスクにどれだけの時間をかけたのかを管理することで、勤務実態をより具体的に把握することができます。実態を具体的に把握することで、管理者から部下へのマネジメントが、より最適なものとなります。
把握した情報をもとに管理者が部下に対して時間配分・効率化などの指導をしたり、部内でのタスク再配分を行ったりすることで、残業(時間外労働)の削減および生産性の向上が見込めるのです。
工数管理方法については、工数管理機能がついた勤怠システムで勤怠管理とまとめて行うのが効率的です。勤怠管理と工数管理を同じアカウント上で実施できるサービスを導入するのがお勧めです。
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【注意点1】「月末にまとめて勤怠実績を入力」はやめましょう
残業(時間外労働)申請・承認方式で気を付けたいのが、「リアルタイムに管理できているか」です。残業(時間外労働)対策は、適切なタイミングで打つ必要があるからです。
「毎日勤怠入力をするのは面倒なので、月末にまとめて勤怠実績を入力している」という従業員は意外と多いのではないでしょうか。せっかく残業(時間外労働)申請・承認方式を取り入れていても、月末に一気に申請されては適切なマネジメントができません。
管理側は、「従業員が毎日勤怠入力をする仕組み」を作る必要があります。
【従業員が毎日勤怠入力をする仕組みの事例】
- 直行直帰・出張中にも勤怠入力をしやすいクラウド型の管理ツールを使う
- 勤怠管理システムのアラート機能で従業員にエラー通知。打刻漏れの入力を促す
- 勤怠管理システムのアラート機能で管理者に部下の勤怠状況を通知し指導を促す
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【注意点2】「隠れ残業」の見える化でブラック企業化を予防しましょう
「残業(時間外労働)の削減を目標」に「残業(時間外労働)時間の申請・承認」を実施した場合に懸念されるのが、「隠れ残業」です。
「隠れ残業」とは、強制的に残業(時間外労働)削減を達成させるために労働実態と乖離した勤怠記録をつけることで、未払いの残業(時間外労働)が発生する事象を指します。
「隠れ残業」を防止する方法はいくつかありますが、その1つが「申請・承認した残業の終了時刻(または早出の開始時刻)と出退社時刻に生じる乖離を把握する」方法です。
申請時刻と実打刻時刻の乖離時間を把握することで、残業(時間外労働)時間の過少申告防止が見込めます。
残業(時間外労働)の申請・承認式を導入する場合、実打刻時刻と申請時刻の乖離時間の計上もセットで導入することをお勧めします。
乖離時間の集計のみではなく、「乖離時間数に応じて管理者にアラートを通知して指導を促す」というような運用も効果的です。
メールで通知していくのは手間がかかりますので、指定条件に応じて自動的にアラート通知ができるようなシステムを導入すると効率的です。
ステップ2:適切なタイミングで面談を実施
上記の申請・承認式を導入することで、“残業(時間外労働)の実態を把握する”というステップはクリアできたかと思います。
次のステップは、把握した情報をもとに“適切なタイミング・手法でマネジメントを行う“というフェーズです。
マネジメント方法としては、残業(時間外労働)時間に対していくつか指標を設けておき、「部下の残業(時間外労働)時間数が指定値を超過したタイミングごとに面談を実施する」という方法がシンプルですが効果的です。
残業(時間外労働)が指定値を超過した時点で面談を実施するという点がポイントです。
このままのペースで残業(時間外労働)をすると、月末には45時間を超過してしまうという従業員に対して、月末ではなく月中の時点で指導をするのです。
「過程」の段階で指導することで、「結果(実績値)」への影響度を高めることが期待できます。
過剰な残業(時間外労働)時間をしている対象者を効率的に把握する方法
残業(時間外労働)が指定値を「超過した時点」で面談を行うには、対象者をリアルタイムに把握する必要があります。
しかし、管理者が部下の出勤簿を毎日確認するというような運用は、非効率的です。
そこで、管理コストの削減にあたり「残業(時間外労働)時間が指定値を超過すると、指定の宛先にアラート通知をする」という機能を持った管理ツールの導入がお勧めです。
部下の出勤簿をいちいち確認しなくても、アラート通知を参照するだけで、管理者は過剰な残業(時間外労働)をしている対象者を把握できるようになるのです。
残業(時間外労働)削減のための管理にあたって、管理者が残業(時間外労働)をする・・という本末転倒な状況にならないためにも、管理負荷を軽減させるような仕組みの導入をしたいところです。
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面談の際のポイント
面談の際は、「なぜ残業(時間外労働)が発生しているのか」を把握するために、まず以下の2点をヒアリングしましょう。残業(時間外労働)の申請理由や、工数管理記録をもとに話を進めると、より具体的な話ができるかと思います。
- どのようなプロセスで業務を実施しているのか
- 何にどのくらい時間をかけているのか
次に、ヒアリングした残業(時間外労働)発生の理由をもとに「残業(時間外労働)削減の具体的な方法」を指示・指導しましょう。
また、必要に応じて部内での業務再分配も検討しましょう。
【管理者が実施すべき内容】
- 各作業における部内での平均的な対応時間とAさんの対応時間を比較
- 部内でのAさんの成果を考慮しつつ、Aさんが時間をかけすぎている作業を分析
- 部内と比較してAさんの業務負荷が重い場合、業務の再分配を行う
- Aさんが時間をかけすぎている業務について、効率化の方法を指導
- 残業(時間外労働)と成果の対比を評価に反映するのも効果的
ステップ3:フレックスタイム制度・テレワーク等柔軟な働き方を導入
最終ステップは、制度改革です。面談指導や業務分配等の施策がひと段落しましたら、把握した勤務実態をもとに制度改革に目を向けてみましょう。
日々の勤務時間にばらつきがあるのであれば、フレックスタイム制度の導入で残業(時間外労働)の削減が見込める可能性が高いですし、テレワークで通勤などの労力を削減することで、作業生産性を高められるかもしれません。
【残業(時間外労働)削減を目的とする制度改革の例】
・フレックスタイム制度の導入
所定労働時間に対し従業員自身で日々の勤務時間を決定して働くことができる制度です。
日々の業務量のばらつきを月間で調整することができるので、残業(時間外労働)の削減に効果的です。
また、通勤時間をずらすことで通勤ラッシュを避けることができ、余計な労力の削減による生産性の向上が見込めるという効果や、柔軟性のある働き方ができるので優秀な人材の確保・定着に繋がるというメリットもあります。
ただし、従業員各々に判断を委ねることになるので、管理者がマネジメントをしっかりしないと逆に残業(時間外労働)が伸びてしまうという面もあります。
フレックスタイム制度の導入には、就業規則でフレックスタイム制について規定、および労使協定の締結が必要です。
・テレワークの導入
テレワークとは、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指します。
つまり、勤務にあたり必ずオフィスに出社する必要は無いということです。
これにより、通勤の労力や客先からの移動時間などが削減でき、より業務時間を有効活用できます。
コロナウィルスの影響により、半ば強制的にテレワークを導入し、その有用性について身をもって知った企業も多いのはないでしょうか。
今後、生産性向上、または優良な人材の確保にあたり、ますますテレワークの需要が高まっていくことが想定されます。
テレワーク導入にあたっては、PC・携帯電話、WEB会議システムなどの通信環境の整備や、スケジュール管理・ワークフロー・勤怠管理システムなどの業務管理系システムの整備が必要です。
【まとめ】管理方法の見直しで生産性向上・雇用の多様化を実現しましょう
働き方改革では、「残業(時間外労働)上限規制」というワードが独り歩きしてしまい、生産性向上や、雇用の多様化を図るといった本来の目的を見失いがちな企業が多くあります。
管理の目的を再認識し、管理方法を見直すだけでも良い変化が現れるかと思いますので、今回ご紹介させて頂いた3ステップをぜひ実践してみてください。
残業管理の強い味方 勤怠管理システム kinnosuke(キンノスケ)
なるべく管理工数をかけずにしっかりと管理したい企業は、勤怠管理システムの導入をオススメします。システム上でチェックができてしまうので、管理にかかる負担をかなり軽減できるかと思います。
kinnosuke(キンノスケ)では、多彩なアラート機能や工数管理機能も搭載しており、残業軽減に役立つような仕組みがたくさんあります。
残業管理にお悩みの企業は、一度お問い合わせ頂ければ幸いです。